大阪発人気コミック(庖丁人味平)
の「伝説」が再現できた!?
こらこら、そこのオッサン、水槽にアジのヒラキ入れてどないすんねん。なにィ、これはヒラキやのうて、鯛の「活け造り」やて?ゲゲッ、ほんまや。全身の身ィをそがれて、骨までスケスケになっとる鯛のヤツが、平気な顔あいて泳いどる!けど、この光景、どっかで見たことあるような・・・・・。そうや! これは、かって一世を風靡したマンガ『庖丁人味平』の中で、主人公・味平の父親がやってのけた伝説の秘技"生作り"やんけ。こんなマンガみたいな話があるんかいな。ーいや、それがあったのだ。マンガみたなことを現実にやってのけたのが、大阪市で寿司店「すし活」を営む川口正弘さん(掲載時44)。彼がその技を会得したのは今から19年も前のことだという。「いつもどおりに活け造りを仕上げたんですが、その日は、この道に入って最高の出来だったんですが、それを、お客さんが食べ終わって帰られた後、皿を見ると、なんと、調理から2時間半も過ぎているのに、魚がピクピクと動いていたんです」その瞬間、大のマンガ好きだった川口さんの脳裏をよぎったのが、 『庖丁人味平』のあの場面だったのである。
「『ひょっとして、水槽に入れたら泳ぐんとちがうか!』と入れてみたら、驚いたことに本当に泳いだんですよ」
この翌日から、川口さんは”活け作り”に没頭。連日、5匹ほどの魚を捌いては。水槽で泳がした。もちろん、最初は失敗の連続。が、450匹以上”練習”した結果、ついに3ヶ月後には、秘技「骨泳がし」(命名は本人)の極意を会得したのである。「いかに血管を傷つけず、刺身部分だけを取るかがコツ。いまでは95%の確率で成功するようになりました」
捌かれた魚は、水槽の中で一日ほど、最高で3日は平気で泳ぐようになり、噂が口コミで伝わって、お店は大繁盛。だが、いまでは、この技をお客さんの前では、もうやらないことにしてるという。「半身だけおろして、生簀に戻し、翌日にまたやってきて、『この片身で泳いどるのが、ワシのやねん』と"魚キープ"をする人が増えてきたんです。これでは、せっかくの魚の味が落ちるだけ。うちはあくまでも味で勝負する店なんです」